考えることで余白を知る/秋田道夫『機嫌のデザイン』

 
こんにちは。339PLANNING広報担当ライター・りこです。 特に大きな問題があるわけではないのに、気づくと物事を複雑に考えすぎている、なんて経験はありますか。 「こんちゃんの本棚からひとつかみ」第12回では、そんな感覚に静かに向き合えるプロダクトデザイナーの一冊が紹介されています。この記事では、本の概要と特徴、どんな場面でこの本が役立つかをまとめます。
 

『機嫌のデザイン』とはどんな本?

著者は、プロダクトデザイナーの秋田道夫さん。1953年大阪生まれ。ケンウッドやソニーを経て独立し、LED式歩行者用信号機や交通系ICカードチャージ機など、日常に溶け込むプロダクトを数多く手掛けてきた人物です。60代後半からX(旧Twitter)での発信を始め、短くも本質を突く言葉でフォロワーは10万人を超えています。
本書は、秋田さんが仕事や暮らしの中で積み上げてきた考え方を、インタビュー形式でまとめた一冊。「機嫌をデザインする」「人間関係をデザインする」「仕事をデザインする」「感性をデザインする」という4章構成で、日常から仕事まで幅広いテーマを扱っています。カバーを外すと現れるのが「SIMPLICH(simple + rich)」。シンプルに、という一語が本書のテーマを端的に表しています。
 

こんな人におすすめ

  • 考えすぎるクセがあり、シンプルな視点を持ち直したい人
  • 「気づかれない仕事」「裏方的な役割」に自分なりの誇りを持ちたい人
  • 機嫌や感情を、自分でコントロールしていきたいと感じている人
 

「悩む」と「考える」は、まったく別のことだった

この本の中で、多くの方に知られている言葉が「悩むとは物事を複雑にすること、考えるとは物事をシンプルにすること」です。SNSで広まったこの言葉も、本書のコンテキストで読むと意味の重さが変わります。
秋田さんはプロダクトデザインという、「使われることで完成する」仕事を長年続けてきた人物。その視点から語られる「シンプルにすること」は、単なる整理術ではなく、物事の核心だけを残す思考の姿勢です。こんちゃんは、自分の捉え方が偏り始めたと感じた時にこの本を開くと話しています。解決策を探すためではなく、フラットな状態に戻るための読み方として活用しているようです。
 

「気づかれない仕事」への誇りと、手放すことの効用

本書の中で印象的なもう一つの言葉が「自分の意図は気づかれなくていい。永遠に未完成の世界を小さな力で変えていく」です。
プロダクトデザインは、使う人がデザインを意識しない状態が理想ともいえます。そのスタンスが、この言葉ににじみ出ています。こんちゃんも、企画や広報の仕事は「気づかれない仕事」だと述べ、そこに面白さを見出せるかどうかが、仕事を続けられる理由になっていると話しています。また、自分や他者への過度な期待を手放すことで、楽になれる感覚があるとも語っています。